腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
頭の中がぐるぐると回転しているみたいだ。

罪悪感とか、無力感とか、欠片ほどしかない正義感とか。


全てが半端だった。だから、良い言葉が口をついて出てこなかった。



「……向坂君……」


「ん?なーに」


「ただの正義感からじゃないでしょ?立花君のこと…もっと、別の理由があるんだよね?」



今回は前より断定的な物言いをしたと、自分でも思う。

言ってしまえば赤の他人のことだ。
自分がなにかされた訳でもないのに、ここまで他人に執着出来るものだろうか?


私の言葉を聞くと、向坂君は珍しく一瞬口をへの字に曲げた。
そしてすぐに口角を上げると、机を指でトントンと叩いた。



「……あるよ。だけど、まだ教えられない」


「まだって……じゃあ、いつになったら教えてくれるの?」


「さぁ?でも、そうだな……雪平さんをもっと信用出来たらかな」




また躱された。

もう少し粘ってみようとしたけど、向坂君はもうその事については話してくれそうもなかった。


(倉木さんは向坂君のこと好きなのかな)


あんなとろけそうな顔をしていたんだから、多分好きなんだろうなぁ。



なんだか彼女が可哀想な気がして、その日はずっと心が晴れなかった。

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