腹黒王子とめぐるの耽溺日誌


「なぁ、見たかよ!みみず人間第二部!!クソオブクソ!!ちゃちな恋愛漫画に成り下がっちまった!!」



隼瀬君の席を勝手に陣取り憤慨している佐原君。

最近発売されたみみず人間第二部を見てこれ以上ないって程ブチ切れているが、理由は明白だ。
第一部は"人間の狂気"をテーマに描いていて、第二部は"人間の愛"をテーマにしているからだ。

色恋アンチの佐原君がお気に召さないのも無理はないと思う。



「見たけど普通に面白かったけどねぇ…恋愛モノも描けるなんて多彩だと思うよ」


「うわっセンスねえ!!やっぱ恋愛脳の女とは一生分かり合えないのかなー」



佐原君はあーあ、とため息をつく。

女は恋愛脳ってとんでもない偏見を喋っているけど、佐原君は何も考えず発言するタイプなのでいちいち根に持っていたらキリがない。

後ろでひたすら愚痴ってる佐原君を横目に、一つの空席に目をやる。


あの日から、倉木さんは学校に来ていない。


理由は知らない。けど"担任の谷口先生は風邪"だと言っていた。


(本当かなぁ)


こんな都合良く、"担任の谷口先生に進路相談をした"次の日に風邪で休むものだろうか。

気になって向坂君の方を向いてしまう。


向坂君はいつも通り、クラスメイトと楽しそうに会話をしていた。

向坂君は心配じゃないのかな?倉木さんが自分のせいで休んでるかもしれないのに。

少しずつモヤモヤが溜まっていくのが分かる。


少し疑わしいような目で向坂君を見ていると、唐突に向坂君が私の方に視線を向けた。

私とバッチリ目が合うと、彼はニッコリと優しく微笑んでくれた。


(さ、向坂君カッコいい〜!!)


さっきのモヤモヤが嘘のように解消されていく。

だって、カッコよくてミステリアスでクールな所もある優しい向坂君が私に微笑んでくれたって事実だけで、全ての悩みが解消されたんだから。


私が向坂君の笑顔に惚けていると、佐原君が「このアホ面」と呆れたように言った。


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