腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
あれから数日経った日の放課後。


帰る途中に向坂君から「喫茶店に行こう」と誘われて、久しぶりに二人きりの空間が訪れる事になった。


(向坂君と二人で話すの久しぶりだな〜)


内心ドギマギしている私とは違い、向坂君は相変わらず涼しげな顔でいつもの席に着いた。



「雪平さんどう?あれからなんかあった?」



あれからと言うのは、前回ここで話した時からと言う意味だろう。



「え、えーっと……特にないかな……強いて言うなら、倉木さんに隼瀬君の家に行くように頼まれたぐらい?」


「へぇ、隼瀬の?」



隼瀬という単語を聞くと向坂君は興味深そうに口元に弧を描いた。



「倉木さん、谷口先生と用事があったみたいだから……代わりに私が隼瀬君の家にプリント届けてってお願いされて……」


「なるほどね。それで、どうだった?」


「え?どうだったって?」


「隼瀬とは仲良くなれた?」


「え、なれないよ。ボロクソ言われたし、私も紙にバーカって書いて渡したし……」


「えっ、紙に??弱ったなぁ」



目を見開いて珍しく困ったような顔をする向坂君に少し動揺する。

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