腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
まさか私がもう一度ここに来る事になるとは。


豪邸を前にチャイムを鳴らす。


あんな紙を入れた手前どんな面して話せば良いか分からないけど、隼瀬と仲良くなれたらきっと向坂君も私のことをもっと褒めてくれるに違いない。

そう。全ては向坂君の為なのだ。




「すいませーん………雪平ですけど……」


『なんでまたお前が来てるんだ?この恥知らず』



名前を名乗った瞬間、レスポンスが返ってきた。

もしかしたら紙に書かれてた事は忘れてるかもなんて思ったが、そんな都合のいい話はない。



「倉木さんは忙しいみたいで……あと、この間はすいませんでした……」


『本当に反省してるなら10秒以内に失せろ』


「まぁまぁそう言わず」


『7、6、5、』


「あーーー!!もう!仲良くしようよ!」



思わず頭を掻きむしりながら言うと、インターホンから『は?』と不機嫌そうな声が聞こえてきた。



「いや、ほら、私友達居ないから……仲良くなれたら良いなーって……」


『その性格とその顔なら居ないだろうな』


「なっ……じゃ、じゃあ隼瀬君は居るの?」


『……友達なんて俺には必要ない。邪魔なだけだ』



隼瀬君はちょっとイタい子なのかもしれない。
友達が居ないからってそんな強がらなくても良いのに。



「友達作るの難しいよね……交換日記から始める?」


『お前俺の話聞いてたか?作れないんじゃなくて作らないんだよ。お前と一緒にするな』


「こんな事もあろうかと交換日記用のノート持ってきたんだー。ポストの中入れておきますね」


『おい、そのポストはゴミ入れじゃないんだぞ。変なもの入れるな』


「ついでに学校のプリントも入れといたから。じゃあ、また会おう」



もはや強引だ。

どうせまともに話を聞いてくれないんだから、無理矢理対話させるしかない。

インターホンから何か聞こえてくるが、彼の言葉から背を向け家に戻ることにした。



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