腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「久しぶりじゃないか。最近話せてなかっただろう?」
「おー……そう言えばそうか?」
「全く、相変わらずみたいだな」
その声の持ち主は、随分親しげな口調で佐原君に話しかけているようだった。
誰だ?佐原君とこんな交流があった人なんて居ただろうか。
「その子は?」
その子って言うのは間違いなく私の事だろう。
緊張で何も言えない私に変わって、佐原君は「あん?友達だよ友達」と面倒臭そうに相手に向かって言い放った。
「陸に女子の友達が出来るなんて」
「うるせえなあ……京治には関係ねえだろ」
京治?
京治って、あの立花京治のこと?
バッと後ろを振り返ると、そこには恐ろしく冷たい瞳で私を見る人間がいた。
真っ黒で切れ長な瞳と、細身の身体。
仮面のような笑顔と感情のない瞳は、冷徹と言える印象を私に植え付けた。