腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
『倉木は間違いなくまた失敗する。仮に谷口を誘惑出来て、ゆするネタが出来たとしても倉木は谷口をゆすれないと思う』


『だからさ、代わりに俺らでその現場の写真を撮って谷口をゆすれば良いんだよ。"谷口が倉木さんに無理矢理迫っている"所を』





正義もクソもないような事を言っていた向坂君を思い出して、何とも言えない気持ちになる。


(しかも、写真を撮るのは私らしいし…)


なんでそんな大役を私に任せたんだろう。
緊張で手が震えて写真がブレまくったらどうするんだろう。それでも良いのかな。


6時限目が終わり、クラスの皆が帰る支度をしてる中、私は盗撮した写真で担任の先生を脅さなきゃいけないんだ。

少しは気が重くなっても仕方ないと思う。


神妙な面持ちで谷口先生を見ていると、倉木さんが谷口先生にゆっくりと近寄って行った。



「……あの、谷口先生……この間の続きの話をしたいんですけど、この後空いてますか?」


「…………あぁ。空いてるよ、倉木」



気持ちの悪い顔でニッタリと笑みを返した谷口に、倉木さんの顔は一気に暗くなった。


(ほ、本当にやるの!?)


思わず向坂君の方を見ると、そんなやり取りなんてどうでも良いのか、クラスの人と楽しそうにお喋りをしていた。

信じられない……いくらなんでも薄情すぎるんじゃないだろうか。


そうこう考えているうちに、クラスの人が少なくなっていく。
皆、部活に行くか下校するのだろう。

谷口は倉木さんの肩を抱くと、ゆっくりクラスを後にした。

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