腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「真島ね……まぁ、真島の罪悪感を突くのはありかも」


「わ、私は生徒会長の高野さんが穴だと思うよ!後輩である立花が幅を利かせてる事に恨みがあるかもしれないし…!」


「それを言うなら真島先輩だってそうでしょう?それに、生徒会長で目立つ高野先輩が立花の事を気を付けてない筈が無いもの」


「それはそうかもね」


(さ、向坂君!倉木さんの味方をするの!?)



向坂君に同意された倉木さんは得意気に私の方を見た。

ムカつく!途中から出てきただけの人間が私から向坂君を取ろうとしてる!


あまりにもムカついて向坂君にも非難の眼差しで見つめると、彼は余裕そうな笑みで私を眺めていた。
彼が何を考えているのかさっぱり分からない。



「それじゃあ、俺は真島について調べるよ。倉木さんは谷口先生に、イジメの現場の証拠を押さえるように言ってくれないかな?」


「……っ、良い、けど……」


「大丈夫だよ。もし何かあっても、俺が倉木さんの事を護るからね」



蕩けそうな顔で倉木さんに微笑みかける向坂君に、彼女は目をハートにさせてコクコクと頷いていた。


面白くない。全然面白くない。

シラケた顔で甘い雰囲気を漂わせる二人を見ることしか出来ない。


「向坂君っ……私……!」


「あ、そう言えば倉木さん。門限は大丈夫?今18時半だけど……」



倉木さんが頬を赤らめて何か言おうとしたタイミングで、思い出したかのように向坂君は口を開いた。

その言葉を聞いた瞬間、倉木さんは慌てたように時計を確認し「もう帰らなきゃ…」と名残惜しそうに呟いた。



「さよなら、向坂君……また、学校で……」


「うん、またね」



(当たり前のように私は無視ですか)


この際どうだっていい。
倉木さんからしたら私は憎き恋敵なんだから、無視ぐらいしたくなるだろう。

私だって無視してやるんだから、そのぐらいなんて事ないもん。

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