腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「あれ、今日は返事が書いてない……」
いつものようにプリントを届け、またいつものようにメイドがノートを渡しにくる。
ここまでは変わっていないけど、肝心のノートの中身が前に渡した時からなんの変化もないのだ。
今まではちゃんと返事が書いてあったのに、どうかしたんだろうか。
「あ、あの!」
「……はい?」
「いつもだったらノートに返事書いてくれるんですけど、今日は何も書いてなくて……もしかして、ノート見てないのかな?って……」
そそくさと屋敷に戻ろうとするメイドを引き止め、思い切って聞いてみると、どこか冷めた顔で
私を見つめた。
「雅様はノートの中身を確認されていましたよ。返事が書いてないのなら、何か気分を害されるような事が書いてあったのでは?」
メイドの言葉にギクリ、と肩を震わせる。
心当たりが全く無いわけじゃなかった。
"学校で待ってる"って言葉が、隼瀬君には煩わしい言葉だった可能性はある。
学校に来てないのは、何かしら行きたくない理由が存在するからであって、赤の他人に来いと言われても尚更行く気が出ないものだろう。
(しくったかな〜……今まで良い感じだったのに…)
あまり人付き合いが得意じゃない私にしては、良い方法だと思ったんだけどなぁ。
正直、日記を書くのがここ最近の楽しみになっていた面もあるので精神的にくるものがある。
おまけに、向坂君にも上手くいかなかったって報告しなきゃいけないんだから気が滅入ってしまう。
(向坂君に色々聞いてみるしかないかなぁ…)
何も言えないでいる私を横目で見ると、メイドは
再び鉄の扉の中に入っていった。