腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「あははっ!交換日記なんてしてたんだ。ふふ、和やかだなぁ」


「わ、笑い事じゃないよ……」



放課後の喫茶店。

向坂君に隼瀬君の事を恐る恐る伝えると、交換日記という聞き慣れない言葉に向坂君はケラケラと楽しそうに笑っていた。

全然笑う所じゃないんだけど、余程意外な言葉だったのか「ごめんごめん」と言いながらもまだクスクスと笑っている。



「そ、そんなに笑うことかなぁ……」


「いや、可愛いなぁって思って。雪平さんのそう言う純粋な所、すごく好きだなぁ」




向坂君に凄く好きだなんて言われたら悪い気はしない。

なんだか照れ臭くなって、えへへ…と頭を搔いていると、向坂君が「それで?」とにこやかな顔で私に聞いてくる。



「交換日記がどうかしたの?」


「あっ、その…………途中までは良い感じだったんだけど、全然返事を書いてくれなくなってしまって……」


「ふぅん」



私が手渡したノートを興味深そうにペラペラとめくる。
最後の日記を読んで、向坂君にダメ出しを食らうかと思っていたけど、向坂君は「良いんじゃない?」と、全く気にしない素振りを見せた。




「向こうも少しずつ心を開いてくれてるし、良いと思うけど」


「え!?で、でも、返事書いてくれなかったんだよ?これからどうやり取りすれば……」


「どうって、今まで通り日記を書けばいいんだよ。雪平さんが心を開けば、隼瀬だって絆されるさ」



本当にそうかなぁ。

私には、嫌な気分になって完全に心を閉ざしたように見えたけれど。

半信半疑で向坂君を見つめるも、彼はあっけらかんとした様子だ。


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