腹黒王子とめぐるの耽溺日誌

「お待たせ」


「ううん、全然待ってないけど……誰と話してたの?」


「御影の彼女」


「ぶはっ!」



思わず飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになる。
御影って、あの生徒会の??

困惑の表情で向坂君を見ていると、私の疑問に答えるように話し始めた。



「御影の彼女って男好きで有名なんだ。それなら俺も仲良くなれそうだなって思ってね」


「えっ、えっと……つまり……?」


「んー?もっと詳しく言わないとダメかな?」



向坂君の妙な圧に屈し、首をブンブンと横に振る。
いちいち説明させんじゃねぇと言ったように向坂君にしては鋭い視線で私を射抜くと、今度はヘラりと柔い表情になる。

今日の向坂君はコロコロよく表情が変わるなぁ…



「その子和泉さんって言うんだけど、お喋りな子で色々と生徒会の人達のことを教えてくれるんだ」


「……あ!隼瀬君のことも、もしかしてその子から聞いたの!?」


「そう。雪平さんが嫉妬するかなーって思って言わなかったんだけど、別に隠す事でもないしね」



要するに倉木さんにしたような雰囲気で和泉さんって子にも接しているのだろう。

それを聞いて確かに複雑な気持ちになる一方、隠さないで素直に話してくれて嬉しいって気持ちもある。



「正直に話してくれて嬉しい、けど……あんまり勘違いさせるような事言うと、恨まれて刺されるかもしれないからね…?ちゃんと気をつけてね……??」


「大丈夫だよ、俺はアフターケアもしっかりするタイプだから」



冗談めかしてそう言い放つと、向坂君は綺麗に私にウィンクをして見せた。


(か、カッコいい……)


言ってる事は最低なのに、私の心を掴んで離さない。

向坂君ってなんでこんなにカッコいいんだろう。
ミステリアスだけど、優しくてカッコよくて、話し上手だし聞き上手で……

私に無いものいっぱい持ってるんだなぁ。


今日は向坂君のアドバイスも聞けた事だし、もう一度交換日記を書いてみよう、と心を入れ替えた。

< 64 / 123 >

この作品をシェア

pagetop