腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「向坂君!」


帰りのHRが終わり、帰り支度をしようとしている向坂君に声をかける。



「雪平さん?どうしたの?」


「ちょっと聞いて欲しいことがあって……この後大丈夫かな?」



向坂君は少し驚いたように目を丸くするも、すぐにいつもの笑顔を作った。



「珍しいね、雪平さんから声を掛けてくれるなんて。なにかいい情報でも手に入った?」


「いい情報かどうかは分からないけど、一応共有だけしておきたくて……大丈夫かな?」


「いいよ、行こう」



向坂君はそうすぐに返事を返した。

ふと視線を感じて周りを見渡すと、倉木さんが眉をひそめて私達を見ていた。
そして、様子を伺うように遠慮がちに口を開く。


「……私は、行っちゃ駄目?もしかしたら協力出来ることがあるかもしれないけど」



また私と向坂君の邪魔をしようとしているのか。

前回の彼女の嫌な態度を思い出し、気分が悪くなっていると、向坂君は困ったような笑みを浮かべた。


「ありがとう、でも今日は二人で話したいんだ」


「……そう。分かった。じゃあね、向坂君」



そう俯きがちに言い残し、倉木さんは教室を後にした。
意外と聞き分けが良い倉木さんにも驚いたが、それよりも私と二人で話したいと言ってくれた向坂君に驚いてしまう。

絶対倉木さんも参加する流れだと思ったのに、どうしたんだろう。

そんな私の眼差しに向坂君はニコリと笑みだけを返した。

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