腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「……俺には小学生の頃、親友が居てね。いつも二人で一緒に居た奴がいたんだ」
「なにをするにも、どこに行くのも一緒。二人で一つと言っても過言じゃなかった」
「だけど、中学に入ると同時に離れてしまったんだ。彼は家が裕福で、成績も良かったから私立に受験したからね。でも、今思えば、それがいけなかったのかもしれない」
そう言葉を紡ぐと、向坂君は唇を噛み締めてやるせなさそうに俯いた。
「………毎週のように連絡を取り合ってたけど、いつからか人が変わったように暗くなっていったんだ。いつもは明るい奴なのに、俺と電話をする度に"死にたい"と呟くようになっていった」
「俺が何度慰めて励ましても、あいつはずっと楽になりたいって泣き叫んでいたよ。そして、ついにあいつは屋上から飛び降り自殺を計った」
「なっ……!と、飛び降り……!?」
ドクン、と心臓が一際大きく跳ねた。
向坂君は変わらず真剣な眼差しで私の目をジッと見ている。
「幸いにも木がクッションになって死ぬことはなかった。それ以来寝たきりになってしまったけどね…」
「まさか、飛び降りの原因って……」
「そう、立花京治だ。あいつは、立花から酷いイジメや暴行を日頃から受けていたんだ。飛び降りる前も俺に"立花京治は悪魔だ"って言っていたから……」
そう言い終えると、悔しそうに向坂君は拳を握りしめた。
向坂君は顔を俯かせ肩を震わせる。
こんな彼は初めて見た。