腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「おい、無視してんじゃねぇ」



向坂君に思いを馳せていると、不安そうに隼瀬君は吐き捨てるように言った。



「へ?あ、ごめんごめん。ならなかったらかぁ、そっか……まぁ、その時はその時だよ」


「随分適当な返事だな……」


「そんな事よりも、次会う時もまた対面で話そうよ。日記を届けて返事を待ってってやり取り意外と大変だからさ」


「考えとく」



そうぶっきらぼうに彼は言うと、私に背を向け鉄の扉の先へと戻って行った。



「あ、またね!」



彼の背中に言葉を投げかけると、隼瀬君は無言で私をジッと見たあと、再び前に向き直り重たい扉を閉めた。

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