腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「雪子ー、帰りにゲームショップ寄って帰らねー?」


帰りのHRが終わった後。

またいつものようにゴンッと私の机を蹴るのは、勿論佐原君だ。


「ゲームショップ?なにか買いたいゲームでもあるの?」


「幻のゲームの"Rain"が入荷したらしいから見に行きたくてさぁ。お前も気になるだろ?」


「えっ!?き、気になる!!もしかして買うの!?」


「在庫あったら勿論買うさ!買えたらお前にも貸してやる」


「良いの!?よし!行こう!!」



"Rain"と言えば超激レアゲームの一つで、ゲーマーなら喉から手が出る程欲しいものだ。
市場に出てるって言うのが奇跡に近いけど、そもそも超プレミアゲームなので、見つけたとしても庶民はガラスケースを眺めるのが関の山だ。

その超プレミアゲームを私がプレイ出来るかもしれないと言うのだから、流石に胸が躍る。


いそいそと鞄に筆箱や教科書を詰めていると、ふと誰かが私の肩に手を置いたのが分かった。



「……あ?向坂……?」


「…………へ?」


佐原君が訝しげに私の後ろの方を見る。

私もそれにならって後ろを振り向くと、そこには向坂君が私に美しく微笑みかけるように立っていた。



「雪平さん、ちょっと良いかな?」


「えっ、え?ど、どうし、え……?」


「良くねーよ、雪子は俺とゲームショップに行くっていう約束があるからな」


「約束?ついさっき決めたように見えたけど」


「いつ決めようがお前には関係ねーだろ?つか、普段は絡みないくせに、いきなりなんだよ」



予定通りに事が進まない事にストレスを感じているのか、向坂君に対してかなり刺刺しい口調だ。

そんな佐原君に向坂君は気にする様子もなく、いつものように笑みを浮かべている。


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