腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
めぐるの驚愕
「そ、そうか……お前が慎遥香の双子の兄だったんだな…」
谷口は狼狽えながらもようやく合点がいったというように、起き上がり慎君の方をしっかりと見た。
「ああ……あの時の事は事故だったと聞かされた。不運な事故だったと……でも、お前らの話を聞いたらなんだ?事故に見せかけた"傷害事件"だって話じゃないか!」
「あぁ……そうさ、谷口先生によると生徒会の真島が立花に命令されてやった事らしいな。立花にとって気に入らない慎遥香を、嫌がらせや怪我で転校させる事が立花の目的だったのかもなぁ」
目を細めてなんでもないように言ってのけた向坂君に、慎君はギロリと睨みつけ、向坂君の胸倉を思い切り掴んだ。
「ま、慎君!!暴力はダメだよ!」
「向坂!てめぇ、人の妹をなんだと思って……!!」
「俺はなんとも思ってないよ。それと……慎、イラつくのは分かるけど、これ以上頭に血が上って無駄な手間をかけさせるなら、お前には慎遥香についての一切の情報も共有しない。絶対にだ」
慎君の剣幕に怯むことなく、無表情で慎君を見つめる彼は人間味があまり感じられない。
ただ、向坂君の言葉は有無をも言わさない迫力があり、慎君もその圧に目を見開いてバツが悪そうに視線を逸らした。
「…………」
「分かったら返事は?」
「……分かったよ、すまなかった。頭に血が上って冷静になれなかったんだ」
「分かれば良いんだよ」
さっきの無表情から一転、向坂君はニッコリと、いつもの人の良さそうな優しい笑みに戻った。
慎君が胸倉を掴んだ時はどうなるかと思ったけど、冷静になってくれて良かった……
「…………では、僕は続きを話しても良いかな?」
「はい。谷口先生、お願いします」