腹黒王子とめぐるの耽溺日誌

「隼瀬と立花の関係なんてどうでもいいだろ?大事なのは遥香をこんな風にさせたのは、真島と立花って事だ。つか、ここまで分かってるなら警察だって動いてくれるんじゃないのか!?」


「それは厳しいと思うけどなぁ」


「なんだ、向坂。犯人が分かってるのに捕まえられないなんて、そんな馬鹿な事があるのか?これはちょっとした嫌がらせなんかじゃない、立派な傷害事件だ!」


「そうだよ、立派な傷害事件さ。でも証拠がない」


「そんなもの、谷口先生の証言と、その時見ていたっていう生徒の証言があれば…」


「一年前の事をわざわざ再捜査してくれるかな。それに、学校としても事を荒立てるのは極力控えたいはず。生徒が傷害事件を起こした事より"たまたま運悪く花瓶が落ちてきた不幸な事故"で片付けた方が都合が良いんだよ」


「さ、向坂君……」


事実かもしれないけど、慎君にはちょっと酷だと思う。

実の妹がくだらない理由で入院生活を余儀なくされてるんだ。
赤の他人の私でもこんな理不尽な事があってたまるかって思うよ。



「じゃあ……どうすりゃいいんだよ!俺達に泣き寝入りしろって言うのか?遥香は、遥香は.…っ、こんな理不尽な目にあったって言うのに……!」



慎君は手が真っ白になるまで力強く拳を握りしめ、必死に、食いしばるように堪えているようだった。

そんな慎君の肩に手を置き、まるで慈しむように優しい笑顔で向坂君はゆっくり口を開いた。

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