腹黒王子とめぐるの耽溺日誌

その後も谷口先生が細かい情報を話してくれたものの、役に立ちそうな話はあまり無かった。



「谷口先生……情報を持ってきてくれるのは有難いのですが、決定的な証拠が無いと厳しいんですよ。ハッキリ言ってね」


「しょ、しょうがないじゃないか!ただでさえガードが硬いんだから……」



期待外れとでも言うように、薄ら笑いを浮かべて言う向坂君に谷口も焦ったように口を開いた。

確かに谷口先生の話を聞いてるといかに情報を集めるのが難しいかと言うのが身に染みて分かるけど、もっと決定的な物を持ってきて欲しかったなというのが本音だ。



「まぁ、俺は遥香の件だけでも真実が聞けて良かったと思ってるけどな。元々不可解な事だらけで怪しいとは踏んでいたが……」


「にしても薄情だなぁ、教員って言うのは。故意にやったって分かっていながら事故で片付けるなんて」


向坂君はチラリと非難の視線を谷口に向けると、谷口はビクリと肩を揺らし、罪悪感からか俯き気味に口を開いた。



「……悪かったと思っている……でも、僕も上から圧力をかけられていたんだ。他の教師だって同じさ、皆好きでやったって訳じゃない……」


「…………白石先生も、知っていたのかな……」



ボソリ、と慎君が呟くと、「彼女は事件が起こった後に新人としてこの学校に来たから知らないはずだ」と谷口が弁解した。

その言葉に露骨にホッとした顔をする慎君。

密会するほど仲が良い訳だし、そりゃ気になるよね。

これで白石先生が知っていて黙ってたって事になってたら、彼は白石先生にも復讐をしようと思うのだろうか?


そう考えていると、突然谷口は慌ただしそうに「これから見回りがあるから……」と一言告げ教室を去ろうと歩き出した。

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