こじらせ男子の橘くんはワケありでした。


─え、今抱きしめられてる?


さっきまで悲しみに浸って

自暴自棄になっていた私は、ふと我に返った。


「ちょ、いきなり何するんですか!」


そう言って腕を振りほどいて男の方を見た。


綺麗な瞳の青年だった。


「死ぬ気ですか?」


そう言って、横断歩道の信号を指差した。


赤信号─。


「やだ、私…なにしてんだろ。」


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