Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
「お待たせしました」
「い、いえ、全く待っていません」
「そうですか。それは良かった。では行きましょう」
このロビーで話をすると思っていた杏奈は、エレベーターに向かって歩き始めた由利の後を追いながら、戸惑いを隠せなかった。
「あの……どこに行くのでしょうか……?」
由利は到着したエレベーターに乗り込むと、無言のまま指先を動かし、杏奈にも中に入るよう促す。
どうしよう……上に行くということは、ホテルの一室にいくということよね……。二人きりの部屋、ましてや自分から中に入ってしまったら、何をされたって文句は言えないだろう。
でも人嫌いだったこの男が、私みたいな女に手を出すだろうか。いや、きっとそれはないと思う。
でもあれから十年経つし、それなりに性欲はあって、来るものは拒まずだったりするのかもしれない--だから私に手を出すほど困ってはいないはず。
葛藤を抱えながらも、杏奈は渋々エレベーターに乗り込む。そのまま扉が閉まり、二人だけの空間となった。
「ああいう人が多い場所で、社の経営に関わる話をするわけにはいかないんだ。そこは察してもらえるとありがたい」
「あぁ……そうですね。私こそ気が回らず申し訳ありませんでした」
彼の横顔を見ながら、雑誌で見た時と同じビジュアルにドキッとする。もしあの記憶がなくて初対面なら、彼の洗練された姿にときめいていたかもしれない。
エレベーターが止まって由利が降りたので、杏奈は彼の背中について行く。
なんて広い廊下かしら……ほんのりと暗めの照明もラグジュアリーな雰囲気を醸し出していた。
由利の足が止まり、彼は部屋のドアを開けると、まずは杏奈に入るよう促す。杏奈は頷くと、部屋の中へと足を踏み入れた。
広いリビングには明らかに高そうなソファとテーブルが並んでいる。そしその奥に見える部屋からは仄暗い灯りが揺れ、ベッドが見えた。
正面に見える窓は一面ガラスになっていて、目の前に広がる海を一望出来た。
「座って」
「は、はい」
じりじりと緊張の汗が湧き始める。ソファに腰を下ろした杏奈は、口から心臓が飛び出しそうになるくらい早く打ちつけていた。
「い、いえ、全く待っていません」
「そうですか。それは良かった。では行きましょう」
このロビーで話をすると思っていた杏奈は、エレベーターに向かって歩き始めた由利の後を追いながら、戸惑いを隠せなかった。
「あの……どこに行くのでしょうか……?」
由利は到着したエレベーターに乗り込むと、無言のまま指先を動かし、杏奈にも中に入るよう促す。
どうしよう……上に行くということは、ホテルの一室にいくということよね……。二人きりの部屋、ましてや自分から中に入ってしまったら、何をされたって文句は言えないだろう。
でも人嫌いだったこの男が、私みたいな女に手を出すだろうか。いや、きっとそれはないと思う。
でもあれから十年経つし、それなりに性欲はあって、来るものは拒まずだったりするのかもしれない--だから私に手を出すほど困ってはいないはず。
葛藤を抱えながらも、杏奈は渋々エレベーターに乗り込む。そのまま扉が閉まり、二人だけの空間となった。
「ああいう人が多い場所で、社の経営に関わる話をするわけにはいかないんだ。そこは察してもらえるとありがたい」
「あぁ……そうですね。私こそ気が回らず申し訳ありませんでした」
彼の横顔を見ながら、雑誌で見た時と同じビジュアルにドキッとする。もしあの記憶がなくて初対面なら、彼の洗練された姿にときめいていたかもしれない。
エレベーターが止まって由利が降りたので、杏奈は彼の背中について行く。
なんて広い廊下かしら……ほんのりと暗めの照明もラグジュアリーな雰囲気を醸し出していた。
由利の足が止まり、彼は部屋のドアを開けると、まずは杏奈に入るよう促す。杏奈は頷くと、部屋の中へと足を踏み入れた。
広いリビングには明らかに高そうなソファとテーブルが並んでいる。そしその奥に見える部屋からは仄暗い灯りが揺れ、ベッドが見えた。
正面に見える窓は一面ガラスになっていて、目の前に広がる海を一望出来た。
「座って」
「は、はい」
じりじりと緊張の汗が湧き始める。ソファに腰を下ろした杏奈は、口から心臓が飛び出しそうになるくらい早く打ちつけていた。