Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
「嘘に聞こえるかもしれないけど、本当に杏奈を愛してるんだ」

 耳元で囁かれ、これが事実ならどれほど幸せだろう--杏奈は眉間に皺を寄せて俯いた。

「じゃあどうしてあの頃とこんなに違うの……? あの頃みたいに冷たいあなたのまま変わっていなければ、こんなに悩んだりしないのに」
「それは……あのままの自分でいたら、何も進展しないということがわかったからさ。お陰でかなり遠回りをしてしまったよ」
「……一夜の関係じゃないのなら、あなたはわたしをどうするつもり?」

 高臣は杏奈の額にキスをする。

「再会したばかりでこんなことを言っても信用してもらえないかもしれない。でも俺は杏奈以外に考えられないんだ。だから付き合って欲しい」

 付き合う? 言葉の意味を理解するまでに時間がかかった。

「答え合わせにはなったかな?」
「あの……なんでそんな……私たち、そんなに仲良くなかったのに……」
「そうだね。でも俺はずっと杏奈を見ていたよ」

 たとえ嘘だとしても、こんなに甘い言葉を囁かれたら胸が熱くなる。ただ高校時代のことが辛く胸にしこりとして残っているのに、急に付き合うという結論にはなれなかった。

「お互いのことをまだ全然知らないのに、いきなり返事なんて出来ない」
「わかってる。だからゆっくりでいいから、俺のことを知ってほしい」
「今の私を知って幻滅するかもしれないわよ」
「どうかな。君には昔から良い意味で刺激を受けっぱなしだから」
「刺激?」
「あぁ、今もこんなに魅力的な姿に刺激され続けてるしね」

 高臣の指が杏奈の胸の頂を指でつまんだので、思わず甘い吐息が漏れてしまう。このままでは朝の二回戦に突入してしまう危険があった。

「と、とりあえず納得いかないこともあるけど、ゆっくり考えさせてくれる……?」

 高臣はにこりと微笑むと、返事の代わりにキスをした。杏奈は照れたように俯くと、高臣の肩にそっともたれかかった。
< 27 / 88 >

この作品をシェア

pagetop