Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
「実は昨日もうちのキッチンカーが出店してたんだけどね、あの由利高臣が視察のために来場してたの」
「視察? 何の?」
「会社がこのイベントに出資してるみたい」
紗理奈は肩から掛けていたポシェットを開けると、中から今日のイベントのチラシを取り出す。下の方に書かれている協賛会社の名前を指でなぞりながら、驚いたように目を見開く。
「本当だ。YRグループって書いてある」
「でしょ? 私もびっくりした」
「由利高臣を見たの? あの頃のままだった?」
「見たよ。あの頃……よりも大人になってた。なんていうか、雑誌で見たままだった」
「で、どうだった? 怒りが沸々と湧いてきたりした?」
怒り? そういえば彼と話をすることばかりに気を取られ、その感情を忘れていた。むしろ彼に見つめられた時に恐怖を感じた。
あんなことをされた相手なのに、どうしてあの頃の怒りが再燃しなかったのだろう--。
すると紗理奈が不思議そうに杏奈を見つめた。
「あれ、そのことじゃないの? てっきり由利高臣を見つけてイラッとした〜みたいな話かと思った」
「あっ、違うの。実は由利高臣を見つけたから、あのことについて教えてほしいって自分から声をかけたの」
「……なんて言った?」
「だから、由利高臣に話しかけたの」
「あの由利に?」
「そう。最初は彼を知らないふりをして声をかけたの。だって向こうが覚えているはずないって思ったし。だから昨日……ベリが丘のホテルで話をしたんだ」
とりあえず大まかに状況を伝えてみたが、紗理奈は口をあんぐりと開けて呆然としていた。
「ベリが丘って……あの高級ホテルにいったの?」
「行ったけど、重要なのはそこじゃないから。一応退去するまでの流れとかを伝えたら、ちゃんと調べてくれるって」
「あの由利高臣がそんなこと言ったの?」
「うん、約束してくれた」
その時、頭に高臣が果てた瞬間の顔が思い出された杏奈は、思わず頬が熱くなり、唇をキュッと結ぶ。
紗理奈はその一瞬を見逃さず、眉間に皺を寄せて杏奈の顔を覗き込んだ。
「怪しい……絶対に何かあるでしょ?」
やはり小さい頃からお互いを知っているからか、少しの変化も気付かれてしまう。困惑しながらも、紗理奈に聞いてほしい気持ちの方が大きかった。
「視察? 何の?」
「会社がこのイベントに出資してるみたい」
紗理奈は肩から掛けていたポシェットを開けると、中から今日のイベントのチラシを取り出す。下の方に書かれている協賛会社の名前を指でなぞりながら、驚いたように目を見開く。
「本当だ。YRグループって書いてある」
「でしょ? 私もびっくりした」
「由利高臣を見たの? あの頃のままだった?」
「見たよ。あの頃……よりも大人になってた。なんていうか、雑誌で見たままだった」
「で、どうだった? 怒りが沸々と湧いてきたりした?」
怒り? そういえば彼と話をすることばかりに気を取られ、その感情を忘れていた。むしろ彼に見つめられた時に恐怖を感じた。
あんなことをされた相手なのに、どうしてあの頃の怒りが再燃しなかったのだろう--。
すると紗理奈が不思議そうに杏奈を見つめた。
「あれ、そのことじゃないの? てっきり由利高臣を見つけてイラッとした〜みたいな話かと思った」
「あっ、違うの。実は由利高臣を見つけたから、あのことについて教えてほしいって自分から声をかけたの」
「……なんて言った?」
「だから、由利高臣に話しかけたの」
「あの由利に?」
「そう。最初は彼を知らないふりをして声をかけたの。だって向こうが覚えているはずないって思ったし。だから昨日……ベリが丘のホテルで話をしたんだ」
とりあえず大まかに状況を伝えてみたが、紗理奈は口をあんぐりと開けて呆然としていた。
「ベリが丘って……あの高級ホテルにいったの?」
「行ったけど、重要なのはそこじゃないから。一応退去するまでの流れとかを伝えたら、ちゃんと調べてくれるって」
「あの由利高臣がそんなこと言ったの?」
「うん、約束してくれた」
その時、頭に高臣が果てた瞬間の顔が思い出された杏奈は、思わず頬が熱くなり、唇をキュッと結ぶ。
紗理奈はその一瞬を見逃さず、眉間に皺を寄せて杏奈の顔を覗き込んだ。
「怪しい……絶対に何かあるでしょ?」
やはり小さい頃からお互いを知っているからか、少しの変化も気付かれてしまう。困惑しながらも、紗理奈に聞いてほしい気持ちの方が大きかった。