Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
10 独占欲
早々に退社した鈴香を見送ってからしばらくして、『会社の裏側の通りで待ってる』と高臣からメッセージが届いた。
想像していた時間よりも早すぎたので、杏奈は慌てて帰る支度を始める。まさかデートになるとは思わず、黒のギンガムチェックのブラウスにマスタード色のパンツという、ラフな服装で出社していた。
高臣と出かける場所が高い店ばかりだったのでドレッシーな服が多かったが、どうせキッチンカーで働く姿も見られている。今更気にしても仕方ないと自分に言い聞かせた。
化粧室でメイクを直してからエレベーターに乗ったが、気付くとメッセージをもらってから既に十五分ほど過ぎていた。
慌てて会社の裏側に走っていくと、路駐している高臣の車を見つける。一応中を覗き込み、高臣の姿を確認してから車内に乗り込んだ。
「遅くなっちゃってごめんなさい!」
両手を合わせて謝ったが、高臣はその言葉を全く聞いていないのか、すかさず杏奈にキスをする。
高臣の頭できっと顔は見えないだろうが、もしかしたら会社の人がいるかもしれないし、会ってすぐのキスは少し照れてしまう。
高臣は唇を離すと、舌舐めずりをしてからイタズラっぽく笑った。
「杏奈が可愛いから、ついキスしたくなった」
「もうっ……調子いいこと言って……」
「早く杏奈に会いたかったから嬉しいんだよ」
「日曜日に会ったばかりじゃない……というか、今日かなりラフな格好で来ちゃったんだけど、大丈夫?」
「あぁ、もちろん。ちなみに今日はレストランにもホテルにも行かないよ」
「じゃあどこに行くの?」
不思議そうに尋ねた瞬間にアクセルが踏まれ、車は帰宅時間帯の街中を走りだした。
「今日はうちに来てもらおうと思って」
「あなたの家?」
途端に杏奈は緊張感に包まれる。家に行くということは……心臓が早鐘のように打ち付ける。
「でも、食事は?」
「実は家で準備してもらっているんだ」
なるほど。家政婦さん的な人がいるのね--きっとノースエリアでは当たり前なのだろうが、初めてノースエリアに入る杏奈にとっては、自分が場違いな気がして不安になる。
そのことに気付いた高臣は、赤信号で止まった時に杏奈の髪をそっと撫でた。
「ただ警備が万全な住まいだと思ってくれればいいよ。それに……杏奈が嫌なら家はやめて、違う場所でも構わない」
「ううん、別に嫌ではないんだけど……ちょっと緊張するなって思っただけ」
高臣は微笑むと、再び杏奈の頭を引き寄せて唇を重ねた。それだけで杏奈の頬も体も、まるで火がついたように熱くなる。
彼のキスってどうしてこんなに甘いのかしら--何度してもそう思ってしまう。
そして信号が青に変わり、車は高臣の家に向かって走り出した。
想像していた時間よりも早すぎたので、杏奈は慌てて帰る支度を始める。まさかデートになるとは思わず、黒のギンガムチェックのブラウスにマスタード色のパンツという、ラフな服装で出社していた。
高臣と出かける場所が高い店ばかりだったのでドレッシーな服が多かったが、どうせキッチンカーで働く姿も見られている。今更気にしても仕方ないと自分に言い聞かせた。
化粧室でメイクを直してからエレベーターに乗ったが、気付くとメッセージをもらってから既に十五分ほど過ぎていた。
慌てて会社の裏側に走っていくと、路駐している高臣の車を見つける。一応中を覗き込み、高臣の姿を確認してから車内に乗り込んだ。
「遅くなっちゃってごめんなさい!」
両手を合わせて謝ったが、高臣はその言葉を全く聞いていないのか、すかさず杏奈にキスをする。
高臣の頭できっと顔は見えないだろうが、もしかしたら会社の人がいるかもしれないし、会ってすぐのキスは少し照れてしまう。
高臣は唇を離すと、舌舐めずりをしてからイタズラっぽく笑った。
「杏奈が可愛いから、ついキスしたくなった」
「もうっ……調子いいこと言って……」
「早く杏奈に会いたかったから嬉しいんだよ」
「日曜日に会ったばかりじゃない……というか、今日かなりラフな格好で来ちゃったんだけど、大丈夫?」
「あぁ、もちろん。ちなみに今日はレストランにもホテルにも行かないよ」
「じゃあどこに行くの?」
不思議そうに尋ねた瞬間にアクセルが踏まれ、車は帰宅時間帯の街中を走りだした。
「今日はうちに来てもらおうと思って」
「あなたの家?」
途端に杏奈は緊張感に包まれる。家に行くということは……心臓が早鐘のように打ち付ける。
「でも、食事は?」
「実は家で準備してもらっているんだ」
なるほど。家政婦さん的な人がいるのね--きっとノースエリアでは当たり前なのだろうが、初めてノースエリアに入る杏奈にとっては、自分が場違いな気がして不安になる。
そのことに気付いた高臣は、赤信号で止まった時に杏奈の髪をそっと撫でた。
「ただ警備が万全な住まいだと思ってくれればいいよ。それに……杏奈が嫌なら家はやめて、違う場所でも構わない」
「ううん、別に嫌ではないんだけど……ちょっと緊張するなって思っただけ」
高臣は微笑むと、再び杏奈の頭を引き寄せて唇を重ねた。それだけで杏奈の頬も体も、まるで火がついたように熱くなる。
彼のキスってどうしてこんなに甘いのかしら--何度してもそう思ってしまう。
そして信号が青に変わり、車は高臣の家に向かって走り出した。