Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
* * * *
「それで? 何があったの?」
食洗機の使い方がわからず、そのまま置いておいていいと言われたけど、放置することが嫌だった。杏奈は洗い物をしながら、背後から抱きついてくる高臣にそう尋ねた。
「かなり真面目な話になるけどいいかい?」
それなら離れた方がいいんじゃないかしら--そう心の中で思っても、口には出せないほど高臣に気持ちが傾いている。
「うん、大丈夫」
一呼吸置いてから、高臣は口を開いた。
「長屋の土地の地主とは知り合いだったりする?」
「うん、地主さん--高須さんの家もその長屋の裏にあったから、小さい頃はよく遊んでもらったりしたけど……高須さんがどうかしたの?」
「実は、その地主が何者かに騙されていた可能性があるんだよ」
杏奈の手が止まる。
「騙されていたって……どういうこと?」
「あの長屋の土地が欲しい人間がいたようなんだ。地主に今後この土地は安くなる、今なら二割り増しで買い取ると嘘を吹き込んで、君の両親を長屋から追い出すよう仕向けた黒幕がいるんだ」
「じゃあやっぱり……両親は騙されたのね……」
あんなに長年の大事にしてきた弁当屋を、両親は泣く泣く手放した。なのにそれが何者かによるものだったと知ると、悔しくて悔しくてはらわたが煮え繰り返りそうになる。
「不動産って、売買の記録が残るんでしょ? それなら誰が売買に関わっていたかもわかるんじゃないの?」
高臣が急に黙り込んだので、杏奈はそこにこそ何かがあるのだと勘付く。
前回話をした時に彼が言っていたこと--頭を回転させ、ようやく一つの言葉に行き着く。
「もしかして……契約書があるの?」
「さすが杏奈だね。その通りだよ。地主側が不利になるような内容の契約が交わされていたんだ。しかも一度読むだけではわからないように、巧みに練られた内容でね」
「法律のプロが関わってる--」
「そうとしか思えない」
それに吉村くんが関わっているのだろうか--洗い物を終えた杏奈が高臣の方を振り返ろうとしたその時だった。顎を引き寄せられ、キスをされる。
「とりあえず俺からの報告はここまで。またわかったら伝えるよ」
高臣が言わないということは、まだ確証がないのだろう。ただ彼も忙しい中でここまで調べてくれたし、それだけで十分有難かった。
「高臣くん、忙しいのにここまで調べてくれてありがとう。YRグループはこの件に関わっていなくて、地主さんも騙されてのことだったのなら、もう十分だよ」
「俺のことは気にしなくていい。自分の会社のことでもあるから、はっきりさせたいだけだから」
「うん……ありがとう」
彼の言葉一つでこんなにも安心出来る。それは親でも友人でも感じたことのない、特別な感情だった。
「それで? 何があったの?」
食洗機の使い方がわからず、そのまま置いておいていいと言われたけど、放置することが嫌だった。杏奈は洗い物をしながら、背後から抱きついてくる高臣にそう尋ねた。
「かなり真面目な話になるけどいいかい?」
それなら離れた方がいいんじゃないかしら--そう心の中で思っても、口には出せないほど高臣に気持ちが傾いている。
「うん、大丈夫」
一呼吸置いてから、高臣は口を開いた。
「長屋の土地の地主とは知り合いだったりする?」
「うん、地主さん--高須さんの家もその長屋の裏にあったから、小さい頃はよく遊んでもらったりしたけど……高須さんがどうかしたの?」
「実は、その地主が何者かに騙されていた可能性があるんだよ」
杏奈の手が止まる。
「騙されていたって……どういうこと?」
「あの長屋の土地が欲しい人間がいたようなんだ。地主に今後この土地は安くなる、今なら二割り増しで買い取ると嘘を吹き込んで、君の両親を長屋から追い出すよう仕向けた黒幕がいるんだ」
「じゃあやっぱり……両親は騙されたのね……」
あんなに長年の大事にしてきた弁当屋を、両親は泣く泣く手放した。なのにそれが何者かによるものだったと知ると、悔しくて悔しくてはらわたが煮え繰り返りそうになる。
「不動産って、売買の記録が残るんでしょ? それなら誰が売買に関わっていたかもわかるんじゃないの?」
高臣が急に黙り込んだので、杏奈はそこにこそ何かがあるのだと勘付く。
前回話をした時に彼が言っていたこと--頭を回転させ、ようやく一つの言葉に行き着く。
「もしかして……契約書があるの?」
「さすが杏奈だね。その通りだよ。地主側が不利になるような内容の契約が交わされていたんだ。しかも一度読むだけではわからないように、巧みに練られた内容でね」
「法律のプロが関わってる--」
「そうとしか思えない」
それに吉村くんが関わっているのだろうか--洗い物を終えた杏奈が高臣の方を振り返ろうとしたその時だった。顎を引き寄せられ、キスをされる。
「とりあえず俺からの報告はここまで。またわかったら伝えるよ」
高臣が言わないということは、まだ確証がないのだろう。ただ彼も忙しい中でここまで調べてくれたし、それだけで十分有難かった。
「高臣くん、忙しいのにここまで調べてくれてありがとう。YRグループはこの件に関わっていなくて、地主さんも騙されてのことだったのなら、もう十分だよ」
「俺のことは気にしなくていい。自分の会社のことでもあるから、はっきりさせたいだけだから」
「うん……ありがとう」
彼の言葉一つでこんなにも安心出来る。それは親でも友人でも感じたことのない、特別な感情だった。