Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
 中には花の形をした色とりどりのチョコレートがいくつも詰め込まれていた。それらを見ていると、高校時代に彼からもらったものを思い出す。

 唐揚げのお礼にくれたのは、いつも可愛いらしいデザインのものばかりだった。食べるのが勿体無いくらいなのに、あまりにも美味しくてペロリと食べてしまったのを、今でも鮮明に覚えていた。

 その時、たくさんの花に囲まれた中央にあるものがチョコレートでないことに気付く。レースのようなものに包まれ、リボンできちんと留めてある。

 手に取ると、その形にハッとした。固くて丸くて輪っかになっているもの--リボンを解いた杏奈は、両手で口を押さえて目を見開いた。

「あの……高臣くん、これってもしかして……」

 高臣は杏奈の手から指輪を受け取ると、彼女の左手の薬指にそっとはめる。杏奈は嬉しさのあまり、瞳いっぱいに涙を溜めた。

「杏奈、俺と結婚してください」

 まっすぐな言葉に、とうとう杏奈の目からは涙が溢れてしまう。

 彼と一緒に過ごすようになってから、いつかこんな日が来ることを願っている自分がいた。同じ時間を一緒に過ごして、同じ場面で笑う。

 二人でいることが自然だと思えるようになった時、そんな甘い未来を想像してしまった。

「私なんかでいいの?」
「杏奈がいいんだ。杏奈だけが欲しいんだよ」
「……ありがとう。すごく嬉しい」
「返事を聞かせてくれるかい?」

 高臣が杏奈の手を取り、指輪にそっと口付ける。杏奈は体の芯から熱くなり、彼に抱きついた。

「……高臣くんに恋をしない理由が見つからない。それくらいあなたが好きなの。だから……これからもよろしくお願いします」

 二人は微笑み合うと、まるで誓いのキスのように唇を重ねる。

「まさかこんな結末が待っているなんて、高校生の私が知ったら驚くでしょうね」
「そうかい? 俺は杏奈とのやりとりを通じて、なんとなくピントは来ていたよ。この子とだったらいつまでも一緒にいたいと、高校生ながらに思っていたくらいだからね」
「そんなことを思ってたの?」
「実はね。だから高校生の俺が知ったら、きっと喜ぶと思うな。だって君は俺の価値観や世界を変えてくれた張本人だからね」
「私が……?」
「唐揚げの美味しさも、チョコレートの味がそれぞれ違うことも、杏奈がキスが大好きなことも、君がいなければ気付けなかったよ」
「き、キスが大好きって……」

 図星だったから反論出来ない。高臣とのキスは杏奈をいつも恍惚の世界へ誘ってくれるのだ。

「それに結末じゃないよ。これからたくさん記念日を作って行こうって言っただろ? まだまだ物語は続いていくんだ」

 高臣は杏奈の髪に触れながら、にっこりと笑顔を向ける。
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