心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
遼はにっこりとほほ笑んで、手を振って出て行った。


後日、診察を受けた帰り道、駿介に遼の話をした。

「ご近所さんにお友達ができたの」

「男?女」

「男のひと。絵画教室の先生」

言うと、駿介は冷ややかな表情を見せた。男性と軽々しく友達になった紗知子に呆れているのか。

「でも、電球替えようかって言ってくれたのは、ちゃんとお断りしたよ。知り合ったその日に家に招き入れるようなことはしていないから」

「電球くらい、俺が替えるよ」

「でも、あまりいつまでも駿ちゃんを頼りにするわけにもいかないから、なんでも自分でやれるようにしたい…」

駿介は聞きながら、心なしか苦しげな表情を浮かべていた。

その時、紗知子の話を遮るように、駿介の胸元のスマホが震え出した。

手に取った駿介の表情に、緊張が走った。

「総合病院で急患だ、いかなくちゃ。紗知子も一緒に行こう」

「え、私、今どこも調子悪くないよ」
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