心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
駿介だった。

クリニックに出勤する前に立ち寄ったのだろう。掃き出しの窓からリビングに上がるなり、紗知子をソファに寝かせて脈を取った。

「自分は医師なので、彼女を診るから、もう大丈夫ですよ」

駿介は立ち上がって遼とまっすぐ向かい合った。

遼は蒼白の顔で立ち尽くしていたが、自分にはなにもできないと感じたのか、一礼して家を出て行った。



駿介は紗知子を背負いクリニックへ向かった。

処置室の診察台に寝かせ、一連の処置を終えると、紗知子の頬にそっと手を当てて見下ろした。

「ほんと、ほっとけないな」

「ごめんなさい」

紗知子は申し訳なさと、先ほど遼との間で起きたことを思い、駿介の顔を直視することができなかった。掛けていたタオルケットを、顔半分まで引き上げる。

無茶をしたつもりはない。ただ、遼の顔が近づいたとたんに、動悸が速まってしまったのだ。

「ここで安静にしてて。診察終わったら送るから」
< 24 / 45 >

この作品をシェア

pagetop