心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
駿介は壊れそうなものを手の中に包むかのように紗知子の髪を撫でると、部屋を出て行った。


夜。
駿介とともにクリニックを出て家に向かう途中、紗知子は思い切って昼間の出来事を打ち明けた。倒れた時部屋にいた彼が、以前話した絵画教室の先生であること。彼に好きだと言われ、キスされそうになったこと。

すると駿介は立ち止まり、紗知子をじっと見つめた。まるで睨み付けているような目線に紗知子はたじろいだ。

「紗知子は、あの男を好きなのか?」

「…分からない」

激しく打った鼓動を思い出し、胸元できゅっとこぶしを握った。あのドキドキは、ときめきからくるものだったのだろうか。

「脈が不安定になるようなら、あまり会わない方がいい、てか、もう会うな。会っちゃだめだ」

駿介の低く、鋭さを含んだ声が、胸に重々しく沈んでいく心地がした。

恋の予感にドキドキしただけで、この心臓はダメージを食らってしまうということのなのか。
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