心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
振り返って駿介の視線の先を追うと、ギャラリーのウインドウのガラスが割れていた。

通行人がガラスに触れないよう、ウインドウは透明のビニールシートで覆われている。

赤い三角コーナーを立てて、立ち入り禁止のテープが巡らせてあった。


「割れてる」

「危ないね。何かぶつかったのかな」

紗知子もその光景を見つめた。

駿介のやけに悲し気な顔が、心に残った。


一向に雨がやまないので、仕方なく雨の中帰ることにした。

駿介がジャケットを被せてくれたから紗知子は甘露を凌ぐことができたが、家に着くころには駿介は髪も洋服もぐっしょりと濡れてしまっていた。

夜の空気はまだ冬の冷気を孕んで冷たかった。

紗知子はエアコンを入れ風呂を準備し、手渡したタオルで髪を拭く駿介にすすめた。

「風邪ひくといけないから、お風呂でゆっくりあったまって。その間に服、乾かしておくから」

「ありがとう。紗知子は大丈夫?」

「私はほとんど濡れていないから、着替えれば大丈夫」
< 27 / 45 >

この作品をシェア

pagetop