心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
駿介は切羽詰まったような表情で紗知子に近づき、長い腕を回して紗知子の体をぎゅっと包んだ。

「紗知子…あの男には近づくな」

鼓動が高鳴る。どうしよう、ドキドキが収まらない。けど、遼の時とは違った。

「俺がそばに居る。大丈夫だから」

さらに強く、ぎゅっと抱きしめられた。

駿介の体温は、紗知子を安堵させる暖かい空気を纏っている。しばらくそうされるうち、鼓動が収まっていくのがわかった。

「紗知子、今日は俺、ここに泊まっていく。いいか」

髪に唇を当て、駿介が囁いた。紗知子はゆっくりとうなずいた。


二階の来客用の寝室に駿介を案内し、廊下を歩いて自室に入ると、紗知子はベッドの布団に潜り込んだ。


深い眠りに落ちる手前の、霞んだ意識の中。

遼がくれたクローバー畑の絵を思い出し、声をあげて起き上がった。

絵の左下にあった、「Ryo」のサインの残像が、ぼんやりとまぶたの裏に浮かんだのだ。
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