心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
そのためには駿介に話さなければならない。

遼が自分にとって大切な人かもしれない、そのことを確かめたいのだと。

部屋のドアを開けて廊下に踏み出た。

そのとき、階下のリビングの床が、ミシっと鳴った。

駿介が起きているのだろうか。続いてキイ…っと掃き出し窓が開く音がして、紗知子はそっと階段を下りた。リビングの電気はなぜか消えている。闇の中に建つ人影に、声をかけた。

「駿介?どうしたの」

リビングのスイッチを押し、灯りが人影をくっきり照らした瞬間、紗知子は息を呑んだ。

遼だった。全身黒づくめでリュックを背負い、靴のまま部屋に立っている。掃き出しから出て行こうとするところだった。

見渡せばリビングの家具のあらゆる引き出しは荒っぽく開けて物色され、金品を盗まれたことがすぐに分かった。

「遼さん、何してるの」

紗知子が怯えながら言うと、遼がずかずかと紗知子に近づいて口元を押さえた。
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