心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
「あなたが駿介君の思い人か。会えてうれしいよ。僕が本物の清宮遼だ」

「紗知子です。初めまして」

駿介は清宮に、額縁を渡した。

清宮は受け取るとギャラリーのウインドウを開き、打ち付けてあったフックに絵をかけながら言った。

「半年くらい前だったかな。朝早く、この絵の撤収作業をしてたらさ、駿介が血相かえて、僕にとびかかってきてね」

清宮は言いながら駿介を顎で指し示す。

「この絵、外しちゃうんですか、ってものすごい剣幕で僕に詰め寄ってきてさ。もう怖いのなんのって。おじさんを脅すのか、って聞いたら、撤去するなら僕にその絵を買い取らせてくれって言うんだ」

駿介はバツが悪そうにうなじのあたりを掻きながら清宮の話を聞いている。

「でもね、申し訳ないが僕の絵は相当値が張る。君みたいな若者には手が届かないものなんだよって教えてあげたんだ」

「清宮さんのこと、俺ほんとに全然解ってなくて」
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