心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
昔と変わらないつややかな前髪。その隙間から覗く切れ長の美しい目には、大人になったしるしのように艶っぽい色合いが足されていた。

噂では、東京での駿介はかなり優秀で、大病院で将来有望な外科医として働いていると聞いていた。

駿介は紗知子の隣に座ると、自分の手の上に、紗知子の華奢な手を乗せた。指を滑らせ、そっと手首に触れて脈を取る。その仕草が妙に色っぽかった。

紗知子は呆気にとられながら尋ねた。

「駿ちゃん、どうしてここに?」

「いいから、ここで静かに待ってて。あとで迎えに来るから」

「私今から診察なんだけど‥」

紗知子の言葉も聞かずに、駿介は病院の奥へと消えてしまった。ピンと伸びた背筋が凛々しかった。
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