心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
「あ、やだ、ごめんなさい」

あわてて服を整え、紗知子は立ち上がった。


紗知子と駿介は、クリニックでの診察を終えると一緒に外に出た。休診中の看板を、出入り口に下げる。

駿介はいつも、午前の診察時間の最後に紗知子を診る。その後、必ず紗知子を家まで送り届けてくれるのだ。

過保護すぎやしないか、と訝しむこともある。

が、万が一、帰り道に何かの拍子で失神でもしたら、といったリスクを考えれば、安心できてありがたいのだが。


「駿ちゃん、これからは私、一人で帰るよ」

紗知子はこの日、思い切って駿介に提案してみた。

「どうしたんだよ、急に」

駿介は訝しそうに紗知子を見る。

「そんなに信用ないかな、私。帰り道に猛ダッシュで走り出したりしそう?」

「そんなことはないよ」

駿介はくくっと笑う。

「ただ…俺が送りたいだけだから」
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