ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
「ビオレッタ。道具屋の二階に空き部屋があるじゃろ。そちらに勇者様をおとめできんかの」

(やっぱり……)

 ビオレッタは項垂れた。
 村長もオリバも、道具屋の二階しか当てはなかったようだ。

「シリオの武器屋にも、空き部屋はあると思います……」

 彼も隣の家に一人で暮らしている。一時的でも住むなら、男同士のほうが……

「あいつに勇者様のお世話が出来ると思うかの?」

(……思わない)

 ビオレッタはシリオの生活を思い浮かべた。人参を生でまるかじり。魚を焼いてまるかじり。部屋は汚部屋と化している。
 無理だ。勇者の住む所ではない。

「ビオレッタさん。俺は便利ですよ」

 項垂れていたビオレッタに、目を爛々と輝かせたラウレルが向かい合った。

「まず、強いです。レベル99の勇者です。女性の一人暮らしはなにかと危険ですが、用心棒になります。誰にも負けるつもりはありません。
 転移魔法も使えます。薬草の採取も、私と一緒ならあっという間です。世界中を旅したので、どこでも転移魔法で連れていって差し上げます。
 旅をしていたので、料理や洗濯もそこそこ出来ます。もちろん自分のことは自分でやりますがビオレッタさんが忙しいなら俺が全て請負っても構いません。
 現在は定職に就いてませんが、魔王を討伐した褒賞を使いきれないほどいただいているので金ならあります。家賃が必要なら言い値をお支払いします。あとは……」

「も、もういいです」

 駄目押しとしてラウレルから怒涛のプレゼンをされ、圧倒されてしまったビオレッタは反論する気力も失せてしまった。

「ビオレッタ、お願いできるかの」
「はい…………」

 ビオレッタは、とうとう首を縦に振ることとなった。

「ビオレッタさんありがとうございます! きっとお役に立ってみせますから!」

 ラウレルは満面の笑みでビオレッタの手をとった。
 ぎゅっと握られるその手からは、喜びが溢れているようだった。


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