ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
 洗濯や料理もやります、と豪語していたラウレルはこの三週間、宣言通りじつに良く働いてくれている。
 それはビオレッタが恐縮してしまうほどで、正直とても助かっている。

「ありがとうございます、ラウレル様。終わったらもうゆっくり休憩なさって下さいね」
「いえ、このあとは村長様に薪割りを手伝うよう言われていて」

 案外、ラウレルは多忙だった。
 村長をはじめ、宿屋のオリバ、武器屋のシリオなど、皆が色々と頼みごとをするので休む暇がない。彼もそれを軽く引き受け、器用にこなしてしまう。そのため、どんどん頼まれることが増えていった。

「働きすぎですよ。たまには断ったっていいのですよ」
「いえ、頼られるのは嬉しいですし……俺はこの毎日が楽しいんです。グリシナ村でこんなに平和な毎日を送ることができるなんて」

 実際、ラウレルは楽しそうである。薪割りをしていても、家屋の修繕をしていても、いつもにこにこと朗らかだった。

 考えてみれば、ひと月前までは魔王と生きるか死ぬかの戦いをしていたお方なのだ。ビオレッタにとってはありふれたこの平凡な毎日が、ラウレルには新鮮に映るのかもしれない。

 でも……働き過ぎると、人は身体を壊すのだ。これは絶対だ。勇者といえど、人間だ。自分も含め、皆ラウレルを働かせ過ぎなのだ。

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