ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
 その日からそれほど間をおかず魔王が討伐されたことに、ビオレッタは正直驚いた。

 グリシナ村ではレベル上げにかなりの時間を要していたではないか。勇者達の旅は、もっと年単位にわたる長期的なものだと思い込んでいたのに。

 そして不安になった。いきなり平和になった世の中で、道具屋としてどう生計を立てていこうかと。

 道具屋で売っている傷薬も毒消し草も、生活に無くてはならないものだ。しかし、これまでのように売れはしないだろう。何せモンスターがいなくなったのだから。

 道具屋だけで生活が維持出来るだろうか。村の皆のためにも、死んだ両親のためにも、そして自分のためにも……道具屋を辞めるわけにはいかない。
 しかし道具屋として収入が見込めなくては、他の生き方を考えなくてはならない……

 悩んでいたビオレッタの店に、隣の武器防具屋店主・シリオがやって来た。
 
「おい! また勇者がやって来たぞ」
「え? うちの村に?」

 魔王を倒した英雄が、こんな小さな村に何の用だろうか。
 グリシナ村は海のそばにあり景色は良いが、観光地という雰囲気でもない。本当に素朴で、外からの人間にとっては面白くもない村のはずだ。勇者の再訪は、村民全員が不思議に思っていることだろう。

 入り口のドアを薄く開け、おそるおそる外の様子を伺おうとビオレッタが顔を出すと……

 なんと、すぐそこに噂の勇者が立っていた。

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