ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
両親の面影
明くる日、暇を持て余していた道具屋に、お隣のシリオがやって来た。
武器屋である彼の手には切り傷が絶えない。今日もまた新たな傷を作ってきたシリオは、「やっちまった」とバツが悪そうに傷口を見せた。
仕方がない。ビオレッタはシリオの無骨な手に、容赦なく傷薬を塗りこんでいく。
「痛え……もっと優しくできねえ?」
「染みるかもしれないけど、傷口に塗らないと意味無いでしょ? 我慢して」
シリオは文句を言いながらも、ビオレッタが傷薬を塗り終えると「ありがとよ」と屈託なく笑う。いつもこうして言葉にしてくれる所が憎めない男だ。
薬を片付けながら、ビオレッタはふと昨日の出来事を思い出し、何気なくシリオにも聞いてみた。
「……ねえシリオ、あなたは予知夢見たことある?」
「あ?」
「目を閉じると、未来が見えるっていうじゃない?」
「ああ、砂浜のやつか? 俺は見たことあるぞ」
「えっ、嘘!」
なんと、ロマンチックなことには無縁なシリオすら、予知夢を見たことがあるらしい。
シリオは経験無いだろう……と勝手に仲間意識を抱いていただけに、なんとなく敗北感を抱いてしまう。
「嘘じゃねえよ。見たのはまだガキの頃だが、予知夢でも俺は武器屋してたな」
「シリオらしいわね。予知夢はちゃんと当たってるし」
「お前は? 予知夢でも道具屋やってたか?」
「それが……」
ビオレッタは、つい口篭る。
昨日ラウレルと砂浜で試してみた時も、ビオレッタには予知夢が見えなかった。
ラウレルが見たという結婚生活……は置いておいて、道具屋として生きている未来さえも見えてこなかったのだ。
「私……この先、道具屋できているのかしら」
「あ? 何言ってんだ?」
「私には予知夢が見えなくて」
シリオの前で不安を口にした時、外からラウレルが帰ってきた。
カウンター越しに向かい合うビオレッタ達を見て、ラウレルの動きが僅かに止まる。
武器屋である彼の手には切り傷が絶えない。今日もまた新たな傷を作ってきたシリオは、「やっちまった」とバツが悪そうに傷口を見せた。
仕方がない。ビオレッタはシリオの無骨な手に、容赦なく傷薬を塗りこんでいく。
「痛え……もっと優しくできねえ?」
「染みるかもしれないけど、傷口に塗らないと意味無いでしょ? 我慢して」
シリオは文句を言いながらも、ビオレッタが傷薬を塗り終えると「ありがとよ」と屈託なく笑う。いつもこうして言葉にしてくれる所が憎めない男だ。
薬を片付けながら、ビオレッタはふと昨日の出来事を思い出し、何気なくシリオにも聞いてみた。
「……ねえシリオ、あなたは予知夢見たことある?」
「あ?」
「目を閉じると、未来が見えるっていうじゃない?」
「ああ、砂浜のやつか? 俺は見たことあるぞ」
「えっ、嘘!」
なんと、ロマンチックなことには無縁なシリオすら、予知夢を見たことがあるらしい。
シリオは経験無いだろう……と勝手に仲間意識を抱いていただけに、なんとなく敗北感を抱いてしまう。
「嘘じゃねえよ。見たのはまだガキの頃だが、予知夢でも俺は武器屋してたな」
「シリオらしいわね。予知夢はちゃんと当たってるし」
「お前は? 予知夢でも道具屋やってたか?」
「それが……」
ビオレッタは、つい口篭る。
昨日ラウレルと砂浜で試してみた時も、ビオレッタには予知夢が見えなかった。
ラウレルが見たという結婚生活……は置いておいて、道具屋として生きている未来さえも見えてこなかったのだ。
「私……この先、道具屋できているのかしら」
「あ? 何言ってんだ?」
「私には予知夢が見えなくて」
シリオの前で不安を口にした時、外からラウレルが帰ってきた。
カウンター越しに向かい合うビオレッタ達を見て、ラウレルの動きが僅かに止まる。