ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
「ご両親は……?」
「顔も知らないし、どこにいるのかも分かりません。もしかしたら両親とも既に死んでいるのかも」
「そうなのですか……あの、こんなこと聞いてしまってすみません。私……」
「そんな顔しないでください。俺にとってはそれが当たり前なので」
 
 ラウレルは本当に気にしていないようだけれど、ビオレッタは反省した。彼のことをよく知りもしないのに、突っ込んだことを聞いてしまった。
 親の顔を見たことも無く、子供の頃から一人きりで生きてきたなんて……それが『当たり前』であったとはいえ、大変な思いをしていたに違いない。その孤独は、ビオレッタにも少しくらいなら分かるから。

「当たり前とはいえ、寂しかったですよね。私も両親がいなくなってからは一人きりで寂しい思いをしたので……少しですが、そのお気持ちは分かります」
「そうですね、寂しくなかったといえば嘘になりますけど、でも大丈夫です。今はこうしてビオレッタさんと暮らせているから」
「えっ……」

 笑顔でそんなことを言われたら、ラウレルを道具屋から追い出せなくなってしまう。この生活は、一時的なものであるはずなのに。

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