ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
一緒に暮らして一ヶ月ほど。ラウレルは、道具屋の様子までよく観察しているようだった。
これまで帳簿の付け方や商品の仕入れなど、両親のやり方を見よう見まねで続けてきたが――なるほど、行商人であった両親の名残があったらしい。
「ラウレル様はすごいですね。少し見ただけで、私の両親のことまで分かってしまうなんて」
「いえ、そんなことはありません。経験上、見たことがあるというだけで――そうだ」
ラウレルは、道具屋のカウンターに置いてあるランタンを手に取った。
鈍色に輝くフレームに、レリーフ入りのガラスがはられた可愛らしいものだ。中にキャンドルを灯すと、明かりのない夜を優しく照らしてくれる。
それも、両親が現在の頃からずっと使い続けていた。
「これも、エーデルニの街の名産品なんですよ」
「エーデルニ……?」
「子を望む夫婦が、訪れる街なのです」
エーデルニは、グリシナ村のずっとずっと西に位置する大きな街だった。街の北側には大きな運河が横切っており、その先に子宝の女神を祀る大きな神殿があるという。
「その神殿には跳ね橋を下ろして行くしかないんですけど、そこに以前モンスターが現れまして。討伐の要請があって、訪れたことがあったのです」
モンスターは、行く手を阻むかのごとく跳ね橋手前に陣取った。そこでラウレル達勇者一行が討伐を引き受け、そのモンスターを退治したということがあったらしい。
「よく覚えています。神殿へ参拝した人々は、みんな祈りを込めたランタンを持ち帰っていたので」
「で、では、父と母も」
「かつてエーデルニへ行かれたのでしょうね。ビオレッタさんを授かりたくて」
ビオレッタは、ラウレルの手にあるランタンを見つめた。
毎日、何気なく使っていた淡い灯火にそのような願いが込められていたなんて。
「……いつか、私も行ってみたいです。エーデルニへ」
「そうですね! ご両親が行った場所――ビオレッタさんが行きたいと思う場所、すべて行きましょう!」
「はい……連れて行ってください、ラウレル様」
ビオレッタと同じ、孤独を知っているはずのラウレルは、そんな影も見せずに明るく笑う。
その強さには惹きつけられるものがあって、ビオレッタも大きく頷いた。
これまで帳簿の付け方や商品の仕入れなど、両親のやり方を見よう見まねで続けてきたが――なるほど、行商人であった両親の名残があったらしい。
「ラウレル様はすごいですね。少し見ただけで、私の両親のことまで分かってしまうなんて」
「いえ、そんなことはありません。経験上、見たことがあるというだけで――そうだ」
ラウレルは、道具屋のカウンターに置いてあるランタンを手に取った。
鈍色に輝くフレームに、レリーフ入りのガラスがはられた可愛らしいものだ。中にキャンドルを灯すと、明かりのない夜を優しく照らしてくれる。
それも、両親が現在の頃からずっと使い続けていた。
「これも、エーデルニの街の名産品なんですよ」
「エーデルニ……?」
「子を望む夫婦が、訪れる街なのです」
エーデルニは、グリシナ村のずっとずっと西に位置する大きな街だった。街の北側には大きな運河が横切っており、その先に子宝の女神を祀る大きな神殿があるという。
「その神殿には跳ね橋を下ろして行くしかないんですけど、そこに以前モンスターが現れまして。討伐の要請があって、訪れたことがあったのです」
モンスターは、行く手を阻むかのごとく跳ね橋手前に陣取った。そこでラウレル達勇者一行が討伐を引き受け、そのモンスターを退治したということがあったらしい。
「よく覚えています。神殿へ参拝した人々は、みんな祈りを込めたランタンを持ち帰っていたので」
「で、では、父と母も」
「かつてエーデルニへ行かれたのでしょうね。ビオレッタさんを授かりたくて」
ビオレッタは、ラウレルの手にあるランタンを見つめた。
毎日、何気なく使っていた淡い灯火にそのような願いが込められていたなんて。
「……いつか、私も行ってみたいです。エーデルニへ」
「そうですね! ご両親が行った場所――ビオレッタさんが行きたいと思う場所、すべて行きましょう!」
「はい……連れて行ってください、ラウレル様」
ビオレッタと同じ、孤独を知っているはずのラウレルは、そんな影も見せずに明るく笑う。
その強さには惹きつけられるものがあって、ビオレッタも大きく頷いた。