ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~


 慣れない浮遊感と白い光がおさまり、ビオレッタはラウレルと共に地面に降り立った。

 ひんやりとした空気。
 子供達のはしゃぐ声。石を打ち付ける硬質な音。

「ビオレッタさん、着きました」

 二人が合わせた休日。転移魔法でやって来たのは小人の町だ。
 ラウレルの声を合図に目を開けると、そこは広い洞窟の中だった。ドーム状の天井には無数の光石が埋め込まれ、洞窟全体をほのかに照らす。

 行き交う人々は皆、子供のように見えた。小さな手には金槌、目にはルーペ。それぞれ小人達は忙しそうに走り回っている。

「世界の装飾品のほとんどは、この町『クエバ』で作られています」
「すごい……!」

 それでは、プラドのバザールで見たあの煌びやかな金細工も、色とりどりの耳飾りも、この指を飾る指輪も……この小人達が。なんて凄い。

「あんなすごい装飾品を、こちらの子供達が作っていたなんて」
「彼らは子供ではありません。じつは私達の何倍も生きている大ベテランなんです」

 小人達は長寿で、生まれて数年するともう装飾品作りに携わる。
 何十年も人生をかけて技術を磨き、仲間内でその技術を継承し、あのような素晴らしい装飾品達を造り上げていくのだ。

「ビオレッタさんの指輪を作ったのは、おそらく私の友人です。行ってみましょう!」

 そう言うと、ラウレルはビオレッタの手を引いて洞窟の奥を目指した。



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