ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
「……ビオレッタさん、無事でしたか」
我に返ったラウレルは、一直線にビオレッタの元までやって来ると、心配そうにビオレッタの手を取った。
よかった。いつものラウレルだ。
いつも朗らかな彼を見ては、この人が魔王を倒したなんて……と信じられずにいたのだが。あの恐ろしいオーラを見れば、魔王を倒したというのも頷けた。
その力を知り尽くしているカメリアは、いまだに庭園の隅へ逃げ込んだままだ。
「カメリア様は、私の話を聞いてくださっただけです。どうか怒らないで下さい」
「ビオレッタさんがそう言うなら……」
みるみるうちにラウレルを覆う空気が穏やかなものに変わっていく。ホッとしたカメリアも、やっと姿を現した。
「私はビオレッタちゃんと話したかっただけよ。そんなに怒らないでくれる? 殺されるかと思ったわ」
「ビオレッタさんを連れ去るなんて誰であっても許せない」
「小さい男ね。女同士の話もあるのよ」
「え……それって俺には言えない話ですか……?」
少し拗ねたような目で、ラウレルがビオレッタを見下ろす。否定も肯定もできなくて、ビオレッタはあいまいに微笑んでおく。
「それはそうと、ラウレル。あんたオルテンシアの王に居場所がばれちゃってるよ」
「王に……?」
カメリアは、このことを伝えにグリシナ村までやってきたようだった。
オルテンシアの城下町では、勇者がグリシナ村にいると噂になっているらしい。噂の出所は行商人や旅人だろうか。
いつまでたっても帰ってこない勇者ラウレルを、オルテンシア王は血眼になって探していた。当然、城下町の噂は王の耳に届いていることだろう。
「オルテンシアの街は姫と勇者の結婚でお祭り騒ぎよ。本格的に結婚準備されると困るから、もう一回断っておいた方が良いんじゃない?」
「王もしつこいな……分かった。ありがとうカメリア」
ビオレッタは、ざわつく心で二人の会話を聞いていた。
姫と勇者の結婚。
それはオルテンシア国民が待ち望んでいるもの。平和になった世界を象徴するものだ。
良いのだろうか。このまま、断ってしまっても……
ラウレルやカメリアはあっさりと断るつもりで話を終えたようだけれど、ビオレッタの心にはどうしても燻りが残る。
「ビオレッタちゃん、帰りはプルガの背中に乗せてもらえば? 竜、初めてでしょ?」
「え……? は、はい」
竜なんて、もちろん見ることも初めてだ。初めてじゃない人なんて、ラウレル達くらいじゃないだろうか。
「私が乗っても、プルガは嫌がらないですか?」
「もちろん。ビオレッタさんさえよければ、プルガに乗って帰りましょう」
少し離れた場所にいたプルガも、口を大きく開けて嬉しそうに咆哮した。
我に返ったラウレルは、一直線にビオレッタの元までやって来ると、心配そうにビオレッタの手を取った。
よかった。いつものラウレルだ。
いつも朗らかな彼を見ては、この人が魔王を倒したなんて……と信じられずにいたのだが。あの恐ろしいオーラを見れば、魔王を倒したというのも頷けた。
その力を知り尽くしているカメリアは、いまだに庭園の隅へ逃げ込んだままだ。
「カメリア様は、私の話を聞いてくださっただけです。どうか怒らないで下さい」
「ビオレッタさんがそう言うなら……」
みるみるうちにラウレルを覆う空気が穏やかなものに変わっていく。ホッとしたカメリアも、やっと姿を現した。
「私はビオレッタちゃんと話したかっただけよ。そんなに怒らないでくれる? 殺されるかと思ったわ」
「ビオレッタさんを連れ去るなんて誰であっても許せない」
「小さい男ね。女同士の話もあるのよ」
「え……それって俺には言えない話ですか……?」
少し拗ねたような目で、ラウレルがビオレッタを見下ろす。否定も肯定もできなくて、ビオレッタはあいまいに微笑んでおく。
「それはそうと、ラウレル。あんたオルテンシアの王に居場所がばれちゃってるよ」
「王に……?」
カメリアは、このことを伝えにグリシナ村までやってきたようだった。
オルテンシアの城下町では、勇者がグリシナ村にいると噂になっているらしい。噂の出所は行商人や旅人だろうか。
いつまでたっても帰ってこない勇者ラウレルを、オルテンシア王は血眼になって探していた。当然、城下町の噂は王の耳に届いていることだろう。
「オルテンシアの街は姫と勇者の結婚でお祭り騒ぎよ。本格的に結婚準備されると困るから、もう一回断っておいた方が良いんじゃない?」
「王もしつこいな……分かった。ありがとうカメリア」
ビオレッタは、ざわつく心で二人の会話を聞いていた。
姫と勇者の結婚。
それはオルテンシア国民が待ち望んでいるもの。平和になった世界を象徴するものだ。
良いのだろうか。このまま、断ってしまっても……
ラウレルやカメリアはあっさりと断るつもりで話を終えたようだけれど、ビオレッタの心にはどうしても燻りが残る。
「ビオレッタちゃん、帰りはプルガの背中に乗せてもらえば? 竜、初めてでしょ?」
「え……? は、はい」
竜なんて、もちろん見ることも初めてだ。初めてじゃない人なんて、ラウレル達くらいじゃないだろうか。
「私が乗っても、プルガは嫌がらないですか?」
「もちろん。ビオレッタさんさえよければ、プルガに乗って帰りましょう」
少し離れた場所にいたプルガも、口を大きく開けて嬉しそうに咆哮した。