ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~


 禍々しい魔王城で。
 最高位魔法を次々と放つカメリア、
 圧倒的な力で魔王を叩き切るラウレル。
 魔王は断末魔と共に黒い霧となり、跡形もなく消えていく。
 辺りからはモンスターの気配も消え、
 魔王城に静寂が訪れた――

 そして時は流れ、平和になった世界。
 ラウレルはグリシナ村の道具屋に帰った。
「ただいま」と言うラウレルに、
「お帰りなさい」とビオレッタが出迎える。
 二人は軽く抱き合い、キスをした。
 足元には、二人に似たかわいい子供達がじゃれあっている――




(なんだ、今のは……!?)

 驚くことに、思い描いていた幸せな未来が予知夢にあった。
 魔王のいない平和なグリシナ村で、ビオレッタと結婚して子供まで。

 これが未来への『予知』であるのだとしたら、俄然、希望が湧いてくる。
 予知夢にそれほど期待していなかったラウレルであったが、そこからは手のひらを返したように予知夢を信じ込むことにした。

(絶っ対に、予知夢を現実にしてみせる)

 そのためには、まず予知夢通りに魔王を倒さなければならない。
 決して簡単なことでは無いが、不可能でも無い。

 グリシナ村にグズグズと居座り、モンスターよりレベルを上げ過ぎたラウレルは、密かに悟っていた。
単純に、倒したい敵より強くなればいいという当たり前の事実を。要は、パーティー全員で魔王より強くなればいい。

 グリシナ村を発ってからは、ひたすらレベル上げに明け暮れる。カジノや宝の収集などはまるっきり無視して、高経験値の敵を狙い、倒して倒して倒しまくる。

 ラウレルはとにかく早く魔王を倒したかった。それも全員無事で、確実に。
 うかうかしている間にビオレッタが誰かに奪われでもしたらと思うと、気が逸って仕方がない。

 
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