ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
 そうと決まれば行動の早い彼は、朝食を平らげるとすぐ転移魔法を使い、オルテンシア城まで向かってしまった。

「あの……オルテンシア王と、どうかケンカしないでくださいね」
「ビオレッタがそう言うなら気をつけます。けど、向こうの出方次第ですね」

(ふ、不安だわ……)

 ビオレッタはというと、彼のことが心配で気が気ではない。無意味に店内をぐるぐると歩き回ったり、窓を何度も何度も拭いてみたりと、何をしても落ち着けなかった。

 何せ、ラウレルはオルテンシア王相手に「勇者辞めます」と言いに行っているのだ。今更ながら、事の大きさに不安は募った。




 その後、何度目かの窓掃除をしていると、意外と早くラウレルが帰ってきた。
 時間にして、一時間もかかっていないだろうか。
 
「おかえりなさい、早かったですね?」

 オルテンシアでのことが気になって、話を聞きたいけれど……ラウレルのその顔は、不満でいっぱいという具合だった。どうやら満足のいく結果ではなかったらしい。

「あの王は、話にならない」
 
 つまりは『勇者』を返上できなかったそうなのだ。
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