ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
 彼はオルテンシア王に対し随分とご立腹の様子。その勢いに、ビオレッタも思わず相槌を打ってしまった。

 このラウレルの怒りよう。もしかしたらビオレッタへの求婚を隠れ蓑にして、グリシナ村に身を隠すことが真の目的なのかもしれない……と深読みしてしまう。

 ただ、目的はどうであれ、これ以上ここに居座られるのは困る。単純に居場所がないのだから。

「ですがこれ以上、ラウレル様が村の宿屋に居座るのも難しいのですよ。何せ小さな宿屋ですので」
「はい。俺も女将のオリバさんから圧を感じてました。ですから、村長様へ直談判しに来たんですよ」
「直談判?」

 ラウレルは、このグリシナ村でどこか身を寄せられる場所を提供して欲しいと村長に頼み込んだらしい。なんという勇者の特権を行使したのだろうか。
 すると村長は、屋根の修繕を交換条件として、住む場所を提供しようと約束したようだ。

「修繕も終わったので、これから村長様のところへ返事を伺いに向かいますが……ビオレッタさんも来ますか?」

 なんとなく……胸騒ぎがする。やな予感がする。
 ビオレッタは確認のために、村長のもとまでついていくことにした。




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