ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
 ラウレルが『勇者』の任を解かれてから一ヶ月。
 今日、村の教会ではラウレルとビオレッタの結婚式が行われる。

 カメリアも招待し、現在道具屋の二階ではビオレッタの準備を手伝ってくれていた。
 ドレスの着方も分からないビオレッタは、カメリアに任せきりだ。彼女は手際良くドレスを着付けていく。

「それにしても……こんなに上等なシルクのドレスも、一点ものの首飾りも、たった一ヶ月でどうやって準備したのよラウレルは」
「それは以前プラドのバザールに行ったときに頂いて……」

 実はあの時、プラドで商人達から山のように贈られたものは、すべて婚礼用の品物だったことが判明した。
 ラウレルに恩を感じていた商人達は、そうして彼の求婚の後押しをしていたらしい。あの時、ビオレッタは全く理解していなかったが。

「ラウレルもほんと策士よね……一見あんな無害そうな顔をして。その指輪もそうよ」
「この指輪ですか?」

 ビオレッタの指に輝くのは、金に蒼い宝石が煌めく指輪。ラウレルの指には、同じく金に紫の石が輝いている。

「街ではね、夫婦はお互いの色を身に付けるの。その指輪みたいにね。ビオレッタちゃんのそれはいわゆる、結婚指輪ね」
「結婚指輪!?」
「結婚前に渡されちゃってるけどね……」
 
 またもや知らないことだった。ラウレルを思い起こす色だとは思っていたが、これも商人達に仕組まれたことだったとは……知らずに身に付けていたことが恥ずかしい。結果的には、一生身に付けることになったけれど。



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