【完結】私とコンビニ吸血鬼~春夏秋冬、ピュアな初恋片想い~

「おーい! なにやってんすか!?」

 また別の人の声。
 
「あ、はーい! すみません!!」
 
 レジから声をかけられて、吸血鬼が慌てている。
 
 私も焦ってしまったけど出てきたのは男の子だった。この人もいつもいるバイトさんだ。

「あー! 邪魔しちゃってすまねっす! あがっていいっすよ。あと俺やるっす」
 
 男の子がニヤッと尖っていない歯を出して笑った。

「え、でも」
 
「待たせてないで早くあがってよ。お疲れさまっす~!」

「あ、あざっす! あの、じゃあ」

 吸血鬼は背中をバンバン叩かれてタイムカードを押しに行った。
 
 私はどうしよう……と肉まんを眺めてとりあえず店を出たら、すぐに吸血鬼が黒のダウンジャケットを羽織ながらやってきた。
 制服を着ていない吸血鬼を見るのは初めてだった。
 黒いダウンジャケットなんて、ちょっと意外だったけど似合ってる。
 
 ずーっと降ってる雪はやっぱりずーっと降っている。
 
「ごめんね。驚かせて、食べなよ。よく買ってるでしょ?」
 
 今日は朝から何も食べなかったのに肉まんを見たらお腹が鳴った。
 
「いただきます……」
 
 ここの肉まん、コンビニのなのに角切りのお肉がいっぱい入ってる。
 大きめの筍がシャキシャキして、皮はふわふわで……。
 じんわり口いっぱいに、温かさが広がる。
 いっつも買っちゃう大好きな肉まん。
 覚えててくれたんだ……。
 やっぱり……美味しい。
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