【完結】私とコンビニ吸血鬼~春夏秋冬、ピュアな初恋片想い~

「その人と話ができるのなら、話をしてみるといいよ」

「……そうですよね」

「ごめんね、そんなのわかってるって……当たり前だって思うよね」

「いえ、そんな事」

「でも、目の前にいて話ができるって……やっぱりすごい奇跡だから」

「え? 奇跡……?」

 流星が降ったみたいな、突然の言葉。
 奇跡なんか、そう聞かない。

「そうだよー。だって1年、10年、100年時間が違ったら出逢えることもなかったし。その中で出逢えて、生きてて、顔を見て、話ができるなんて……奇跡みたいな時間だよ」

 吸血鬼は歩きながらコーヒーを飲んでいて、今日も黒い服で、闇夜に溶けそう。
 彼のどこか遠い先を見る目。
 あの春の桜の雨夜の日のようだった。

 私は彼の言葉が切ない気持ちに刺さって、ギュッと胸が苦しくなる。
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