【完結】私とコンビニ吸血鬼~春夏秋冬、ピュアな初恋片想い~

 その吸血鬼だって、きっと私を常連の一人として覚えていると思う。
 でも毎日会うのに、お互い何も知らない。
 
 会話だって『いらっしゃいませ』とか『ありがとうございました』とか
 『あたためますか』そんなもの。
 たまに近所のおばさんや、バイクに乗ってきたお兄さんが話しかけてるの見るけど、女の子から話しかけるとか無理だよね。

 ある日の土曜の夕方、お母さんに、
『あそこのコンビニにニンニクのすりおろしたチューブあるかしら? ちょっと買ってきて』
 と頼まれた。
 最近のコンビニは何でもある。
 ニンニクくらいあるだろう。
 私はちょっとグロスを塗ってマフラーを巻いてコンビニに向かった。

「いらっしゃいませ~こんばんは~」

 吸血鬼は届いたお弁当を売り場に出しながらいつもの明るい声で出迎えてくれた。
 ちょっと青白いけど、そこそこ顔は整ってるしイケメンって言ってもいいかもしれない。
 吸血鬼だけど。
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