【完結】私とコンビニ吸血鬼~春夏秋冬、ピュアな初恋片想い~

「え……」

「ごめん、ちょっと用事思い出した。此処までで。……今日はありがとう……これ」

 待って、待って、待って、待って。

 言葉が出ない。

 今の哀しそうな顔……待って尾瀬君。

 言葉が出ない。

 尾瀬君はカバンから何かを取り出した。

「誕生日プレゼント」

 薄い紙袋を取り出して、私に渡す。
 
「あの……え……あの……あの」

 どうしよう。どうしよう。どうしよう。

「月ちゃんが、吸血鬼好きだって知ってるから」

「お、尾瀬君?」

「誕生日おめでとう。じゃあ」

 尾瀬君は、そう言って走って行ってしまった。

 紙袋は映画館のグッズ売り場の紙袋だった。
 吸血鬼のアクリルスタンドだった。
 映画館から出る時に、彼にちょっと先に行っててと言われた時があった。
 だから私はトイレに行って長蛇の列だったから結局彼を待たせた。

 あの時……?

 私が、この映画の吸血鬼が好きだって知ってるって……こと?

 それとも……。

 わからない。

 でも、私は大馬鹿だってことはわかる。
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