キスから始まる音がする。


 ……柳楽に邪魔された。


「ちょっといいかな」
「うん、わかった」


 そのまま二人は一緒に教室を出て行った。

 なんだあれ!?どういうことだよ……!!


「蓮樹〜、帰りにワック寄ってかね?」
「俺用事あるからパス!!」


 くそ、なんでなんだよ。
 めっちゃダサいってわかっているけど、それでも駆け出さずにはいられなかった。


* * *


 追いかけて辿り着いた場所は、体育館裏だった。

 今時体育館裏に呼び出しってなんだよ!?
 そんなベタな告白あるのか!?


「告白ってことだよな……?」


 俺は体育館の角に隠れ、二人の様子を見ている。完全に覗きだけどそんなことは言ってられない。

 俺の位置からだと話し声は聞こえないし、柳楽は背中を向けている。柳楽はかなり背が高いのでみらいの顔もよく見えない。

 だからこそ余計に気になる。


「あ……っ!」


 一瞬だけど、みらいがびっくりしたような表情になったのが見えた。その直後、何故か笑い出す。

 どういうことだ?
 もしかして本当に告白だったりするのか?

 みらいは、OKしたってことなのか?


「……むり」


 絶対無理。みらいが笑顔でいられるなら、みらいが幸せになれるならそれでいいとか思えない。

 みらいの隣にいるのはこれからも俺がいい。
 みらいを笑顔にするのも、幸せにするのも俺であって欲しい。


「――みらいっ!!」

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